映画「君の名は。」を見た。とてもお尻が痛かった。そして、感動してしまった。

映画を見るならレイトショー!を公言している私は今回もレイトショーで鑑賞した。

レイトショーは「ガラガラ」だ。ゆったりと自由に映画を鑑賞することができるから好きなのだ。しかし、今回のレイトショーはいつもと違った。

レイトショーがいつもと違う「君の名は。」のせいだ!

21時のレイトショーに間に合わせる為、19:00分には業務を切り上げ、事務所を後にしようとしたが、同僚から、「話がある」と神妙な顔つきで声を掛けられた。ただならぬ雰囲気を感じたが、レイトショーの時間が気になり、「少しだけなら」と条件を付けて話を聞いた。

「俺・・・会社を辞めようと思う」

思ったより重たい内容の話だった。このタイミングでは聞きたくなかったが理由を聞くと、「上司とそりが合わない」とのことだった。

もう辞めると決心しているようだし、長い話になりそうだし、映画の時間もあったので「ごめん、今日、家内と約束があって・・・」と言って、明日、改めて話を聞くことにした。辞めていく奴に興味はないし、引き継ぎだけきちんとしてくれればよい。後は辞表を出すだけだ。中小企業の人材不足が問題となっており、我が社も人材不足が深刻だが、仕方ない。それよりも映画だ!

私は汚れた作業着で映画館に向かった。

映画館に付くと異様な光景が広がっていた。大変混みあっていたのだ。レイトショーと言えばガラガラが定番。この昼間のような混み具合はなぜだ。

チケット売り場にも列ができており、軽食のコーナーには長蛇の列ができていた。

チケット売り場の列で待つこと10分、私の順番になった。空席を確認すると、前方の席が若干しか空いていない。どういうことか店員に尋ねると「この映画、人気あるみたいなんですよ。エヘヘ」と他人事のように言われた。スクリーンから3列目しか空いていないため、仕方なくその席を購入した。暫くすると、私の購入した回は「満席」となった。レイトショーで満席になったのを初めて見た。

レイトショーが大混雑、その原因は

チケットを購入すると、周りの状況を冷静に確認することができた。若い、オシャレなカップルが多い、いや、多すぎる。汚い作業着で、下腹の飛び出した中年丸出しの私。オシャレな空間に汚い異物が入り込んだ違和感を私が発していた。

いつものレイトショーでは観客は5~6人いるかいないか。その感覚で来た私は、「君の名は。」の人気を恨んだ。こんな恥ずかしい思いをさせやがって。ゴミでも見るような目つきでカップルが見ているじゃないか。ゴミではない。薄汚れた中年だ。最下層のサラリーマンだ!そんな心の叫びもむなしく、上映開始まで30分あるので、私はトイレに向かった。40歳も中盤になるとトイレが近くなる。まして、満席では途中で席を立つと目立って恥ずかしい。カップルに指を刺されて笑われるのだけはご免だった。

トイレから出ると、店員の入場を促すアナウンスがあり、「君の名は。」を見に来たこの世の幸せを謳歌するカップルどもが、一斉にスクリーンになだれ込んだ。その流れに私も乗り、スクリーンに向かった。その途中に再度トイレに向かったのは言うまでもない。念には念を。

私はスクリーンから3列目の席に腰を下ろした。スクリーンからとんでもなく近く、見上げるように体勢になった。また、最近始まった老眼のせいで、近くのピントが合わず、イマイチ見にくい。そんな不安は直ぐに的中した。映画が始まると、近すぎてピントがあいずらかった。また、座席に浅く腰を掛け、背もたれにべったり背中をつけてスクリーンを見上げるような窮屈な格好になってしまった。

これを長時間続けるのは至難の業だ。最後まで体力が持つのか・・・

しかし、そんな不安は直ぐにかき消された。映画の内容に引き込まれてしまったのだ。

40中盤のおっさんが引き込まれたのだ。映画の内容は中年が引き込まれるような内容ではないが、胸の奥が「キュン」となり、甘酸っぱいあの頃を思い出させる気恥ずかしい作品だ。

同僚と見に行っていたら「いい作品だけど、いまいちだな」なんて強がっていたと思う。そんな同僚も退職など考える暇があったらこ「君の名は。」を見ろと言ってやりたい。見ても何も変わらないが、一時的に現実逃避できる素晴らしい作品だ。

ラストでは思わず泣いてしまった。泣いてないふりをするため、あくびをしながら涙をぬぐっていた。なんでこんな小芝居をしなければならないのか。そんな自分が愛らしく思えた。そんなことより、周りのカップルに「このおっさん泣いてる」と思われることが恥ずかしかった。そんな作品だ。

映画が終わると、浅く腰を掛けたせいで、尻に変な力が加わり、とても痛かった。

尻の痛みをかばいつつ、映画館を後にすると、横のカップルが「あそこのシーンで、なんで名前を・・・」などと話していた。1回見ただけでは理解できない人もいたのだろう。彼氏が一生懸命説明していた「だから、手に名前を書いたじゃん。それで・・・」などと言っていたが、手に名前は書いていない。もう一度見ればよいとアドバイスしたくなったが、おせっかいな変態オヤジに思われそうだったのでやめた。

1回見れば十分と思っていたが、久しぶりに2回見たいと思った作品であった。

明日は同僚の「退職理由」を聞く番だ。そういえば同僚の名前は何だっけ?最近物忘れが酷くて困る。明日聞いてみよう「君の名は?」