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残業時間の社内調査が実施されることになった。

発端は、世間を賑わせた電通社員の出来事だった。流行に敏感な我が社も残業時間の是正に取り組むことになった。しかし、タイムカードなどのハイテク機器を持ち合わせていない我が社では残業時間を調べる術がない。困り果てた上層部が熟慮の上、考えだした方法が「自己申告」による調査だった。

目次

画期的な残業時間調査方法

出社した時に、前日の帰宅時間を上司に申告する斬新な方法だ。正確な残業時間を安価で調査するにはこの方法しかない。誰もが納得する方法だ。

上司から社内調査の経緯が伝えられ、特に重要な部分は語気を強めて説明していた。

「自己申告だから、皆、分かっているね」

みんな大人だから分かっている。暗黙の了解というやつだ。

たぶん我が社は残業の少ない、いや、まったく無い会社となるだろう。統率の取れた素晴らしい会社だ。

いや、そんなことはない。残業が全く無いなど我が社ではありえないことだ。残業をしない愚かな社員は一人もいない。全社員が必ず毎日残業をしている。なぜなら、我が社は「みなし残業」を行っている会社だからだ。

みなし残業は貴重な時間

定時は16時45分だが、毎日2時間のみなし残業を実施しているため、実際の定時は18:45となる。定時時間内に業務の終わらない愚かな自分を悔い改める時間を会社が与えてくれる。この2時間は仕事のできる喜びを再認識する時間でもある。

我が社のみなし残業は45時間ぐらいだろうか。労働法で定められている月80時間以内の残業である。なんとクリーンな会社なのか。こんなクリーンな会社と巡り合った幸運を感謝せずにいられない。

定時以降はレクリエーションだ

18時45分以降はレクリエーションの時間だ言われた。我が社ではレクリエーションが盛んだ。お客様に連絡をしたり、見積もりを作ったり、資料をまとめったり、みんな楽しそうにしている。

皆で行うレクリエーションは、とても楽しい。夜中の12時を回る頃には楽しさを通り越してハイテンションになっている。何が楽しいか分からないが変に楽しい。面白く無いのに笑ってしまう。たぶん脳にアドレナリンが大量に出ているのだろう。良い兆候だ。

その状況を見ていた新入社員が2週間で来なくなった。いつものことだから気にしない。

レクリエーションは一日あたり5時間程度だ。休日でも社内でレクリエーションを行っている。会話はほとんどないが、仲の良い職場だ。

一月あたりのレクリエーション時間を計算すると、125時間だ。楽しすぎて生命の危機を感じてしまう。

因みに、みなし残業時間とレクリエーション時間を合計すると175時間だ。人間は意外に頑丈だ。ちょっとの事では壊れないから安心してくれ。

残業時間は45時間だ!

あくまでも残業時間は45時間だ。だから体や心に異常など起きるはずがない。我が社で異常をきたす奴は相当の根性なしだ。45時間の残業でへこたれる情けない奴は、どこの会社でも通用しないだろう。他の会社も我が社を見習ってホワイト企業になってほしい。そうなれば日本中が幸せになる。

さあ、今日もレクリエーションだ!